蔦野白の日常あれこれ

蔦野白の日常の出来事を、やたら大袈裟に壮大に書くことを目的としたブログ。

ストレス値がヤバすぎて情緒が限界ギリギリの会社員がLUSHに救われた話①

213月某日府内、私は芳香漂うその店の前にいた。仕事のある日はいつも間に合わず、閉店後の店内をこっそりと眺めることしか叶わなかった、あのお店の前に。そんな憧れのお店を訪ねるにあたり私が選んだ本日のファッション、チェックポイントは5年前に購入したユニクロの内ボア付きパーカーの袖のヨレ感と言ったところか。華やか大好き人間なのでマスクの上から見えるメイクこそリオのカーニバルに乱入できそうな仕上がりだが、連日の春の陽気でアクネ菌の繁殖地と化した口周りには膿を抱えた爆弾ニキビが所狭しと並んでいる。端的に言えば、心身ともに絶不調。疲労困憊の私が求めた物、それは香りによる癒しだった。

 

 

中学生の頃から将来の夢は、バリバリ働くキャリアウーマンだった。背の高いヒールの靴を格好良く履きこなし、ロビーをカツカツと歩く私。首にはICチップの入った社員証を下げ、手にはスターバックスで購入した豆乳ラテ。出勤してくる他の同僚に爽やかに挨拶をしながら首の社員証をゲートでピッとやるのだ。整頓されてきちんとしたデスクでテキパキと仕事をし、後輩からの信頼も厚い。スタイリッシュ定時退社をキメた後はジムで軽く汗を流し、夕食はサラダ。そこはもちろんDEANDELUCA的なおしゃれサラダをノンオイルドレッシングで頂く。そして寝る前には何か良い香りのアロマを炊いた部屋で何か賢くなりそうな本を読む。

 

 

……書いてるだけで恥ずかしい。猛烈に恥ずかしい。こんなの恥ずか死んでしまう。だけれど、通学路の竹林からタヌキが飛び出してくるような田舎育ちの私の貧弱な知識では、そんな想像が精一杯だった。社会人になってまだたったの5年、それでも分かる。こんな逃げ恥の百合ちゃんみたいな女性はそうそういない。もしいたとしても先に書いたような理想と憧れが詰まった生活をするために、彼女らはどれほどの努力をして、どれほどのことを犠牲にしているだろうか。そして現実の私は毎日スターバックスDEANDELUCAに入れる程の余裕は全く無く、今日もお弁当と水筒を用意して、眉毛すら書いていないベースのみのスケキヨ風メイクで電車に飛び乗り、会社のせっまいトイレでメイクを完成させる生活をしている。仕事の出来は不可では無いと信じたい。理不尽なことに咄嗟に反撃できる性格ではないので、先輩にも後輩にもナメられ気味。一時期何でもかんでも仕事を引き受けすぎて自律神経失調症からのうつ&パニック障害フルコンボで併発してしまい傷病手当が出るギリギリまで休職したこともあるストレス耐性激弱マンだ。そう、私にはバリキャリの素質がなかったのである。寛解してからはいくらかぱっぱらぱ〜な性格になったと自負しているものの、朧豆腐が木綿豆腐になったぐらいの変化だと思う。そんな私はもうバリキャリには憧れなくなった。理想は漫画「ハクメイとミコチ」の生活だ。私はジャダになりたいのだよ……よく分からんという方は漫画も読んで欲しいし、アニメも是非見てほしい。今はU NEXTで無料で見れるっぽいよ。

 

 

話を戻そう。12月と仕事でしんどいことが続いた私はクリスチャンでもないくせに帰り道にある教会に逃げ込み(どなたでもお入りくださいって書いてた)、シャンデリアがぶら下がる高い高い天井をぼーっと見上げるというエモいことをしてしまう程には疲れていた。懺悔室にいる人だって突然現れた仏教徒に「最近、人をしばき棒でどつき回したい案件があまりにも多すぎて」等と相談されたところで回答に困ってしまうだろう。人様に迷惑を掛けてしまいそうなこんなエモい行動はさっさと止めてしまわないといけないのだろうが、今日も今日とて帰宅した家賃48千円の我が城は空き巣でも入ったのかという荒れ具合で自炊をする気力体力等はもはや残っておらず、そして風呂場に置いてある高野豆腐みたいな石鹸からは全く香りがしない。コロナなんて無いずっと前にお泊まり女子会をしたラブホテルからもらったかわいい包みの中身が高野豆腐だっただけでも結構残念なのに、おそらく必要最低限の成分しか入っていないのであろうそれで体を洗う度、惨めな気分が勝手に加速する。浮き輪みたいなお肉の付いたお腹の上を、シャワーのお湯が流れ落ちるのを見て思うのだ。

 

「私には良い香りの石鹸で体を洗う価値もないんだろうか」

 

誰もそんなこと言ってないじゃん。被害妄想も甚だしい。極端が過ぎる。

うつの気配を感じ取った私はその夜、お布団を乾燥機にかけてふわっふわのぬっくぬくにして、睡眠導入剤を飲んで寝た。5秒で爆睡だった。薬は要らなかったかもしれない。

 

そして冒頭に戻る。春の穏やかな風を切って歩くスタイリッシュな人々が続々と店内に吸い込まれて行くのを、勝手にゆらゆらと揺れる体で眺める。千と千尋の神隠しで主人公・千尋がボイラー室の陰から釜爺を見ている時の、あの体の揺れ方だ。あっ、何かスタイリッシュな若いカップルも入ってった。ねぇ、私とおんなじパーカーなのに(おんなじではない)何であんなおしゃれなの?ドアが開閉する度にふわんふわんと漂ってくる良い香りにつられて、よたよたとウインドウに近付く姿は不審者一歩手前だ。折角お休みの日にベッドから這い出し服を着てここまでやって来たのに、お巡りさんに回収でもされてしまったら本当に泣いてしまう。よし、よし……!このお客さんの後ろに着いてぬるっと入ってしまおう……

 

ぬるん

 

そこには天国の花園が広がっていた。

 

いやいや、これは冗談ではない。冗談だと思うLUSH未体験の方がいたら是非行ってみてほしい。

 

色とりどりの華やかで個性的なパッケージは、眺めているだけで心の底から枯れ果てたはずの「楽しい!」や「可愛い!」が湧き上がってくるほどに魅力的だ。それに何と言ってもこの芳香。数年前から何故か柔軟剤の匂いがダメになってしまって、それから香りには敏感だったのに。なんか、なんか……鼻が楽しい!!鼻が幸せ!!

 

ここまで読んでくださった方の中には「柔軟剤の匂いがあかんのに、なんでLUSHやねん」とお思いの方もいらっしゃるだろう。実を言うと少し前までの私もLUSHの製品には勝手に苦手意識を持っていた。ど田舎のイオンで館内図を見ずとも「奴は、ここにいる!」と確信させられる程の強い香り。日本のメーカーには出せない、個性ある華やかな香り。暑いくらいに暖房の効いた冬の館内でむくむくに厚着をした子供時代の私は、LUSHのお店の前で激しく酔った記憶があった。私はスーパーの1パック3個入りの石鹸愛用者としてこの20数年の人生を過ごし、それでなんの不満も無く、何の不自由もなかった。スーパーの石鹸にはスーパーの石鹸の良さがある。お手頃価格で庶民のお財布に優しく、なのにちゃんと控えめなシトラスやお花っぽい香りがするのだから。一方でこの度メンタルが湯豆腐のようにとろけちまった際に何故か思い出したのが、良い香りを纏ってご機嫌な母の姿だった。子供よりも手の掛かる、産んだ覚えの無いデカい長男に現在進行形で手を焼いている母は何かと忙しそうだが、香水とネイルが好きな人だ。シミやヨレでとても綺麗とは言えないお菓子かなにかの空き箱の中には、ペディキュア用の濃い赤が1本と独身時代に購入したのであろう小さな香水瓶がいくつか並んでいて、洋服箪笥の私の段にポプリのサシェを入れてくれるような母だ。そんな母がヤフーオークションにハマっていた時期に、デパートコスメや海外製の石鹸を格安でまとめ買いしたことがあった。ルンルンで包みを開く母の手元を覗き込む。すると、畳に障子の和室が百貨店のお化粧品売り場になった。次の包みを開けば、そこはフランス。ちなみに私はフランスどころか、この島国から一歩足りとも出たことが無い。無いのに、子供が考える精一杯のおしゃれな場所に香りが連れて行ってくれた。それくらいの衝撃だった。子供心に「これはスーパーのやつじゃない。なんかすごい高級な匂いだ」と思った記憶があるのだが、あながち間違いでも無かったらしい。「デパコスと薬局で売ってるお化粧品の違いは、ブランド力・パッケージデザイン・香り」だとするツイートをちょっと前に見掛けたのだ。真偽は知らん。知らんけど。とにかく、今まで経験したことのない繊細で複雑で奥行きがあって高級感のある香りは私を遠くに連れて行ってくれたし、その石鹸でお風呂に入ってご機嫌な母は、映画で見る海外の女優さんみたいな良い香りがした。もちろん海外の女優さんの香りを私は知らない。全て、私の頭の中の話だ。

 

懐古終了。話を元に戻そう。

 

そんなこんなな理由で、私は「おしゃれ」で「海外生まれ」のLUSHにやって来たわけだ。

 

辺りを見回すとカットされた色取り取りの石鹸が美しく並べられている。中央に鎮座するおしゃれな洗面台は、どうやら商品のお試しをするための設備のようだ。それに商品は石鹸だけではないらしい。なんか黒い容器に入ったスクラブっぽい物もあるし、あの壁に掛かってる可愛い風呂敷みたいなのは何だろう……おっ、猫ちゃんの柄もあるじゃん!!

 

と、内心テンションぶち上げでうろついていると、背後から「気になる商品があれば仰ってくださいね♪」と声を掛けられ、慌てて振り返る。

 

「お゛っ」

 

なんかすごい野性味強めの声が出た。こんなんじゃ間違って人里に降りて来たゴリラだと勘違いさせてしまうかもしれない。若干戸惑っていらっしゃる店員のお姉さんに、身振り手振りを交えて事情を説明する。実際は野性味強めの女がむやみに手を振り回しているだけに見えたかもしれないが許してほしい。社会復帰して今年でやっと2年目なのだ。それでもお姉さんはこちらの話にうんうんと頷きながら耳を傾けてくれる。

 

1日の疲れを癒すためのバスタイムなのに、石鹸から良い香りがしないのは確かにちょっとしょんぼりしちゃいますね……

 

 

お姉さん!!!

 

 

文章に起こしたら4,000字超えの冗長なこの話を!!簡潔に!!それでいて今の私にぴったりな「しょんぼり」というワードまで付け加えてくれて!!

 

 

ありがとう!!LUSHのお姉さん!!

 

 

「いや〜そうなんですよね。何かおすすめの商品はありますか?」

 

自分の中の大きな感情をスマートな会話に変換できた私も偉かったと思う。それにこのままだと全く話が進まない。はよ石鹸を買わんかい。

 

ということで次回はいよいよ石鹸を買います!!良かったらまた見にきておくれ!!